浜松いわた信用金庫本部・本店新築工事について
多様な省エネ技術を採用する取組み、SDGsへの取組みが高く評価され、国土交通省が実施するサステナブル建築物等先導事業(令和2年度)に採択されました。
■プロジェクトの全体概要
【建築計画コンセプト】
- 当金庫SDGs行動宣言「ユニバーサルバリュー宣言」の実現の場として捉え、「with/after コロナ」時代に相応しい「安全・安心」と「ウェルネス」、「サステナビリティ」の取組みを地域に示す先導的建築により、地域金融機関としてのSDGsモデルを強く発信するものです。
左:本店棟 右:本部棟
■建物の概要
~役職員の一体感を醸成し、リソースの連携効果を最大化する「人」が主役のオフィス~
- 本部機能を持つ本部棟と、本店窓口業務を行う本店棟の二棟より構成し、3階連絡通路により接続することで、業務連携の強化を図った。
- 本金庫はかねてより営業エリア内の店舗施策において、地域への環境配慮と景観向上を重要な課題と位置付け、店舗建替えにおいても省エネ型空調の導入や太陽光発電の設置等を積極的に推進。
本プロジェクトでは、これらの店舗施策を発展させた省エネ設計を取り入れる。特に、建設地向かいに位置する広大な浜松城公園の景観を重視し、これを損なわず、かつ建物内から浜松城を一望可能となるよう、日射を低減し、ブラインドの仕様を抑制するテラコッタルーバーを建物周囲に配した。徐々に角度を変えながら配されたルーバーにより、風に揺らめくような軽やかな印象を与えるとともに、伸びやかな天竜美林の木立を想起させ、緑豊かな浜松城公園と呼応する、独創的な外観デザインとした。 - 「働く人」の視点を重視し、建物内部からの眺望を確保するため、浜松城公園に面する西側と、天竜美林を望む北側に大きく開く平面計画とした。テラコッタルーバーにより、眺望確保と日射遮蔽を両立することはもとより、金融機関本部としてのセキュリティを考慮して外部からの視線をカット、さらには自然通風を取り込む際に外部風速を和らげながら室内に取り込む機能も創出し、建物内部の執務者にとっての安心・安全、快適性を確保した。
- 職員のコミュニケーションの中心となる4階食堂と、本部棟5~8階の執務室を上下につなぐ吹き抜け空間『夢風スクエア(仮称)』により、煙突効果による自然通風を促し、働く人の意識とコミュニケーションを緩やかにつなぐ空間を演出しました。
審査基準に関する事項 導入する省CO2技術の特徴
プロジェクト名 | 浜松いわた信用金庫本部・本店新築工事 | |||
省エネ性能 | BPI | 0.7 | 目標値 | 設計値:1,170 [MJ/㎡・年] 基準値:1,758 [MJ/㎡・年] |
BEI | 0.7 | 目標値 | 設計値:19,011 [GJ/年] 基準値:28,566 [GJ/年] |
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省CO2技術の特徴 | ① with/after コロナ時代に適応可能な立地特性を生かしたパッシブ手法 ② 「人が主役のABW」を支援するアクティブ・パッシブ空調・照明システム ③ 地場産資源エネルギーによるレジリエンスとサステナビリティ |
〔導入する省CO2技術の内容〕
1. with/afterコロナ時代に適応可能な立地特性を生かしたパッシブ手法
◆天竜美林を想起させる外装テラコッタルーバーによる外皮性能の向上
- 浜松城を望む歴史エリアならではの眺望確保と、日射遮蔽・視線制御を両立させる日射抑制型テラコッタルーバーを配置。天竜美林の木立を想起させる外観で景観形成にも貢献する。
- 吸水・吸湿・蒸散などの冷却効果をもつテラコッタとLow-εガラス、高断熱外壁の組合せにより、外皮の負荷を元から徹底的に断ち、浜松の気候風土の特性を十分に生かす計画とした。
(執務室より浜松城を望む)
◆卓越風をとらえた自然換気システムとナイトパージへの活用
- 外装ルーバーにより、自然通風の風量を最適化し、オフィス内の気流速度を抑えることで室内の快適性を向上させる。反射率の低いテラコッタは光害抑制にも寄与。
- 5~8階の執務室外周部に設ける自然換気窓は、手動により開閉する引き違い窓とする。室内環境と外気の状態を比較し、自然換気に適した環境の際には点灯するエコランプを開閉の判断基準として、執務者自らが身を置く環境を快適になるよう調整することで、季節や時刻により変化する環境を感じ取るエコ・ライフスタイルの意識向上を促す。
◆その他パッシブ手法
- 本店棟1階のロビーに透過率を調整できる調光ガラスを採用し、浜松城への眺望確保と日射遮蔽を両立。ブラインドのない、地域に開かれた外観・内観を実現した。
2. 「人が主役のABW」を支援するアクティブ&パッシブ空調・照明システム
◆個人差を許容する「アクティブ&パッシブ温熱・視環境」の提供
- 光・温熱環境に対する執務者の感じ方に個人差や好みの違いがあることを踏まえ、オフィス空間において積極的にムラ(分布)を創り、各自が働きやすい場所を自由に選ぶことができる、人が主役のABWを支援する。窓の開閉など環境調整を操作できるといった自己選択権を持たせ、室内環境に対する個人差の許容幅を広げる。
- ペリメータに配した「アクティブゾーン」は、外部環境の光や風のリズムを感じながら、変化を許容する空間とした。
- 冷房時にはシーリングファンを運転して気流感による涼感により設定温度を緩和して省エネを図り、中間期の自然換気導入とともに、そよ風と共生するアクティブ空間を演出する。
- 照明システムとしてHuman Centric Lighting方式を採用。自然光により執務者のサーカディアンリズムに即した視環境を形成することで、執務者のストレスの軽減と執務への意欲をサポートする計画とした。
- インテリアに配した「パッシブゾーン」は、安定した光や温熱環境により静穏空間を形成、業務へ集中する場を提供するとともに人がいる場所・時間のみに空調と照明点灯させる。
- 床吹出空調方式により居住域空調を行うとともに、指向性・拡散性を有したVAV機能付き吹出口を採用することで、人がいる場所と時間のみに空調を行う。
- 照明エネルギーの無駄をなくすため、高性能人感・照度センサーで執務者の在不在に応じた照明制御を行い、不在時の消灯を可能とした。人員密度の感知も可能で、照明の制御のみならず、取り入れ外気量の制御にも対応させることで、外気負荷の低減も図る。
◆省エネルギーと健康を両立するマネジメントシステム
- BEMSを用いたエネルギーマネジメントによりエネルギー利用の実態を可視化し、建物運用へフィードバックすることで、エネルギー利用の運用改善に利用する。
- ABWを積極的に推進する本部棟において、CASBEE-ウェルネスオフィスを用い、建物の省エネルギー性のみならず、執務者の健康・快適性を定量評価し、ワーカーのウェルネス向上とサステナビリティの両立に役立てる。
3. 地場産資源エネルギーによるレジリエンスとサステナビリティ
◆浜松の豊富な水・光・熱による創エネルギー
- 全国トップクラスの日照時間を誇る土地のポテンシャルを最大限に生かした太陽光発電設備15㎾を設置し、省エネと災害時の非常電源として利用する。
- 浜松は水源が豊富である一方、夏季は2020年日本一暑い街になるなど蒸し暑い特徴があるため、太陽熱・井水熱を空調熱源としたゼロエネルギー志向のデシカント外調機を採用し、効率的に湿気を処理し化石燃料の依存率を低減した。
◆本部・本店としての業務機能維持の強化
- 浜松いわた信用金庫の統括拠点として、非常用発電機、太陽光発電、緊急用汚水貯留槽及び井戸による雑用水源の確保により災害時のレジリエンスを強化する。平時に省エネルギーな建物は、インフラ途絶時にも少ないエネルギーでも機能維持できる。
- 空調熱源には、電気と耐震性の高い中圧ガスを併用することで、インフラ途絶時の冗長性を確保する。
- 空調熱源に利用した井水は、雑用水源及び断水時の水源確保にも活用し、貴重な浜松市上水を節約する。
(井水熱・太陽熱を利用したデシカント外調機)